茨城県は6月から環境省の区分に基づいて「治癒する見込みがない病気や攻撃性がある等、譲渡不適と判断された犬猫の殺処分」と、「収容中死亡」を除いた殺処分数をもとに「殺処分ゼロ」を目指すと発表した。譲渡不適か否かは客観的な適性判断ができるようガイドラインに則り判断する。
(参照)知事定例記者会見における発言要旨190624(茨城県HPより)
昨年報道された環境省の区分方針については以下を参照いただきつつ、今回茨城県が発表したガイドラインや新基準を適用した場合の「殺処分ゼロ」の数について整理した。
茨城県における犬猫収容後の処分の現状
茨城県における犬猫の収容後の処分の現状について、今回茨城県が発表した平成30年度の最新結果を含めた直近4ヶ年の数字は以下の通り。
平成20年度では犬猫の収容数が10,000頭を超え、殺処分数も9,000頭を超えていたが直近数年は以前と比較すると大きく改善している。犬猫の収容数、そして殺処分数も愛護団体との連携により譲渡数が増加したことで大きく減少していることがわかる。
しかしそれでも全国的に見ると平成29年度では犬猫収容数の多さは全国ワースト10位で、直近の犬猫収容数は3,000頭、殺処分数も446頭にのぼる。
譲渡候補犬の選定に関するガイドライン
この6月から茨城県が運用を開始した、譲渡候補犬の選定ガイドラインは2段階の判定フローとなっている。
1次判定 | 2次判定 | |
判定タイミング | 収容0日目 | 収容8日目以降 |
判定項目 | 健康状態・生育環境 人への攻撃性・恐怖性 環境に対する恐怖性 |
1次判定の項目をより具体的にした基準により判定 |
2次判定の具体的な基準は未公開だが、8日目とはいえ犬にとって不慣れな環境に置かれた状況で生きるか死ぬかの判断をされてしまうのは大きな懸念が残る。まして人と接したことがない野犬の場合はなおさらだ。
なお候補「犬」のガイドラインとなっている理由は、新基準での殺処分対象のほとんどが成犬となるため。
新基準で計測した場合の殺処分数
「譲渡不適と判断された犬猫」と「収容中死亡」を除いた「譲渡可能な犬猫」の殺処分をゼロにしていくという今回の発表。平成30年度の旧基準における殺処分数446頭をこの新基準で置き換えると以下となる。
上の比較表の黄色の部分が新基準における「殺処分ゼロを目指す対象数」となる。対象数は18頭、旧基準と比較するとたったの4%だ。この基準で殺処分ゼロを達成したとして、果たして手放しで喜べるだろうか。
新基準のリスクと根本的な解決方法
この基準の適用で最も気を付けなければならないのは譲渡不適・収容中死亡の数が非公開となることだ。非公開になると誰も正確な殺処分数の把握ができなくなってしまう。これは茨城県だけの話ではなく全国共通のリスクとして認識しなければならない。
この区分自体はこれまでの殺処分の内訳がわかり、「本質的な殺処分ゼロ」という目標が容易ではないことを知る上で有用ではある。目指すべきは啓蒙活動と繁殖等規制の強化による収容数の削減、譲渡不適の犬猫も適するまで面倒を見続けられる環境の構築、および収容中に死亡する犬猫の数を減らすためのケアの充実ではないだろうか。
真っ先に取り組むべきは蛇口を閉めること。つまり収容数の削減である。行政や自治体を非難するだけではなく、官民一体で啓蒙活動を推進することが求められている。