環境省が平成28年度の「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」に関する統計を公表しました。殺処分数は犬猫合計で55,998匹で、前年度比較で67.5%となり順調に減少していることがわかります。その内訳について公表数字を元にまとめました。
(参考)前年度までの実態はこちら↓
殺処分数の推移
直近5年間の犬猫別殺処分数の推移をグラフにまとめました。
犬猫共に確実に殺処分数の数は減っており、特に猫は大きく減少し、ようやく5万匹を下回りました。犬はこのまま推移すれば平成29年度の数字では1万匹を下回ることができそうです。次にその減少の要因を他のデータから検討してみます。
引き取り数の推移
自治体に引き取られる犬猫の数の推移について調べました。
犬猫共にこの5年間で半分近くまで減少していることがわかります。引き取り数が減少したことで、結果殺処分も減少していると考えられます。続いて引き取り後に行われる「返還・譲渡」の数を調べました。
返還・譲渡数の推移
犬の返還・譲渡数はここ数年横ばい状態です。一方猫は譲渡数が以前に比べれば増加傾向にありますが、犬の譲渡数と比較するとまだまだ少ないのが現状です。
殺処分の割合
最後に引き取られた後の処分方法(返還・譲渡・殺処分)の割合を調べました。
前年度と比較すると犬猫共に殺処分の割合は10%近く下がっており、殺処分減少の取り組みが進んでいることがわかります。しかし依然猫については殺処分割合が60%を超えている点は見逃せないポイントです。
良い結果と捉えるべきか
確実に殺処分数は減少しており良い結果と言えます。しかしまだ55,998匹が殺処分されている事実と、数字では表れてこない課題があります。
減少した引き取り分はどこに行ったのか
この5年間で約10万匹の犬猫の引き取り数が減少しています。この5年間で飼い主さんや繁殖・販売業者の意識が変わり自然に減少した、とは考えにくいでしょう。自治体が業者からの引き取りを拒否できるようになったことで引き取り数は減少していますが、新たに「引き取り屋」などの新しい問題が発生しています。
「引き取り屋」についてはこちら↓
保護団体への譲渡という一時しのぎ
自治体として殺処分ゼロの実現に向けて順調に推移していますが、その裏側では保護団体の活躍が大きく、殺処分される前に引き取りを行い助けているのが実態です。つまり一時しのぎとして保護団体に移動しているだけで根本的な解決には至っていません。
まとめ
殺処分が減少したことは良い結果です。しかし引き取りが減少したことで起きている新しい問題、そして保護団体の多大な協力に依存した「見た目だけの殺処分ゼロ」という状態では大手を振って喜ぶことはできません。まずは譲渡が増えていくことが第一歩ですので犬猫を飼いたくなったら是非里親という選択肢を考えてみてください。
参考元:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(平成28年度)を加工してグラフ作成