2018年1月29日(月)放送のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、戌年ということでペット業界をけん引するプロたちに迫る「ワンちゃんスペシャル」でした。
その中で凶暴になってしまった犬だけを専門に請け負う訓練士の方が取り上げられ、その訓練の様子が反響を呼んでいます。
どんな内容だったのか
飼い主に噛みつくなど凶暴化し手がつけられなくなった犬を専門に請け負う訓練士。手がつけられなくなった犬は殺処分となる可能性が高い中、最後の砦として諦めずに更生するまで訓練を続ける。訓練は1年以上続く根気がいるもので、これまで約8割の犬は更生してきた。更生できない場合は訓練士が終生飼養している。
その訓練方法は犬に我慢することを覚えさせるために、竹で作った鞭で打つなど非常に厳しいもの。明確な訓練方法は確立されていないが、訓練とはいえ犬に手を挙げる方法に対し批判を受けるが「悪者になっても、命を守る」という信念のもと飼い主さんの元で一生を過ごさせるために日々犬と向き合っている、というドキュメンタリーでした。
見逃した方はNHKオンデマンドの見逃し視聴(有料)、又は2月2日(金)午前0時10分からの再放送にてご確認ください。
視聴者の反応は?
この内容を受けて賛否様々な意見が飛び交っていますが、賛否どちらが多かったのかソーシャル分析という手法で世論を分析しました。ソーシャル分析とは、あるキーワードを指定しSNS上にそのキーワードが入っている投稿の数や、その投稿内容が好意的な内容だったのか、否定的な内容だったのかを自動で分析するものです。
調査方法について
今回の調査ではYahoo! JAPANが提供するリアルタイムという機能を使用しています。調査対象はTwitter、Facebook、Instagramに書き込まれた投稿の中で「訓練士」というキーワードが入っているものです。調査期間は番組終了直後から12時間以内のものです。「訓練士」というキーワードで調査をしているため関係のない投稿も一部含まれますのでご留意ください。
調査結果について
対象となる投稿数は約1,600件ありましたが、賛否の割合としては好意的な投稿が42%、否定的な投稿が41%と見事に真っ二つに分かれました。(残り17%は判別できなかったということです)
賛否それぞれどのような意見だったのでしょうか。
好意的な意見の例
投稿されていた好意的な意見を幾つか紹介します。
凶暴な犬は、獣医さんすら噛む。きちんと社会生活を送れない。 危ないからって殺処分寸前の子たちをしつけ直す。破傷風や病気感染リスクもある命懸けの仕事。 深い愛情と強い覚悟がなきゃできない。凄すぎる。
長い年月を経て飼い主の元へ戻った時の犬と人双方の喜びに感涙。批判も多いらしいが訓練士さんのご尽力に敬服でした。感謝です。
飼い主さんの元へ戻すことがどれだけ大変なことか。。本当に素晴らしい仕事で、尊敬しかない。。
訓練士さんが一番感動した! あれは虐待じゃないね、愛の鞭だね
好意的な意見は最後の砦として批判を受けながらも体を張りながら犬と向き合う姿に感動した、という意見が多いようです。犬に手を挙げる訓練方法も虐待ではなく、しつけの範疇と捉える意見が多数です。
否定的な意見の例
次に否定的な意見も紹介します。
優しくじゃなくて厳しく更生するんだよ。 徹底的に犬を服従させるんだよ。 ただ、そのためにムチやぶん殴りが適切なのか?方法論を疑問視しています。 他の訓練士さんもみんなぶん殴っているのかな? 『だったらてめぇがやれ』という議論する気がない人はダメ。
今は動物の科学も進歩しています。あのようなやり方をしない訓練士さんを知っています。なので私は賛同はできません。何事も暴力では解決できません。それだけです。
あれを公共放送で流して、犬を叩く人が増えないことを祈るばかりです。
プロセスも方法も犬の心が置き去りなのが残念。良くも悪くも結果だけに拘る訓練士という印象。あれだけ長期の時間を掛ける根気があるのであれば、理に適った犬に優しい方法を用いることも可能なだけに勿体ないです。
否定的な意見はやはり訓練とはいえ手を挙げることへの批判が多く、もっと犬に優しい訓練でも更生が可能、という意見が多いようです。中にはあんなの「プロフェッショナル」じゃない、という意見もありました。
またテレビ番組の影響を懸念する意見も多く、飼い主が同じようなしつけをしてしまうのではという意見も幾つか見受けられました。
本当に考えるべきことは何か?
ここからはライター個人の意見を述べます。
私は訓練の是非よりも考えなければならないのは「何故そこまで凶暴化してしまったのか」だと思います。理由なく凶暴になることはなく必ず原因があります。番組内では「理由は様々」としか触れませんでしたが、考えられる主な要因は2つです。
子犬の親犬からの引き離し時期
犬は子犬の頃に親や兄弟と過ごすことで社会性を身につけることができ、その適齢期が生後8週間程度で、それ以前に引き離してしまうと大人になってから問題行動を起こす確率が上がると言われています。しかし日本では子犬人気が高く8週齢を待たず引き離し、流通へと流れています。
少しでも凶暴化する可能性を下げるためにも子犬の親犬からの引き離し時期は8週齢を超えてからとすべきではないでしょうか。
飼い主のしつけ方法の誤り
直接的な原因は家庭でのしつけ方だと考えられます。虐待は論外ですが逆に犬を可愛がり甘やかしすぎた結果、飼い主に従わないモンスターペットとなってしまうケースも見受けれます。またしつけ方法については飼い主が「自主的に勉強するもの」になりがちです。
飼う前にしつけの仕方を必ず学ぶというステップを設けることで多くは解決できるのではないでしょうか。今すぐ実現はできないと思いますが、きちんとしつけ方法を学んだ人にのみ飼育の資格を与える資格制度を導入し、資格がなければ飼えない、となると良いと考えます。
番組に出演した訓練士の方がプロフェッショナルか否かではなく、凶暴化する犬を減らすことで、「厳しい訓練をせざるをえないプロフェッショナル」が必要なくなることを社会全体で考えていければなと思います。