犬の引取り数、殺処分数の推移
まずは犬の引取り数、返還・譲渡数、殺処分数の推移を纏めました。
犬の引取り数は約3万8千匹となり、前年と比較すると約2千700匹の減少。これまで毎年5千匹以上の減少を続けていたことを考えると少し頭打ち感が見られる結果となりました。次に犬のみの返還・譲渡の推移をグラフに纏めました。
犬の返還・譲渡数は平成29年度は約3万匹となり、ここ数年横ばいが続いています。しかし返還・譲渡率は伸び続けており約80%の犬が引取られた後に返還、もしくは譲渡されている結果となりました。次に犬のみの殺処分の推移をグラフに纏めました。
犬の殺処分数はついに1万匹を下回り、約8千匹となりました。ただしこの数年の殺処分率の推移を見ると、やや減少トレンドが鈍化しつつあり引取り数同様、頭打ち感が見られる結果となっています。
猫の引取り数、殺処分数の推移
続いて猫の引取り数、返還・譲渡数、殺処分数の推移を纏めました。
猫の引取り数は約6万2千匹となり、前年と比較すると約1万匹の減少。まだまだ犬と比較すると多いですが、引き続き大きく減少しています。次に猫のみの返還・譲渡の推移をグラフに纏めました。
猫の返還・譲渡はこの数年大きく増加してきましたが、ここに来て前年度とほぼ同じ数である約2万7千匹となり、足踏みをする結果となりました。ただし引取り数が減少していることもあり、返還・譲渡率は43%にまで伸び、このままの推移で伸びれば数年以内に犬と同様、猫も自治体に引取られた後でも半数は助かるという時代を迎えることができそうです。
猫の殺処分数は約3万5千匹となり、前年比較でも約1万匹の減少となりました。殺処分率も猫はわずか5年前まで90%超えていたことを考えると、この5年間で大きく前進した結果となっています。
犬猫それぞれの返還・譲渡の内訳
最後に犬猫それぞれの返還・譲渡の内訳もグラフで纏めました。
ご覧の通り犬は返還の割合が高く、迷子犬となる子の数が多いことがわかります。一方で猫はほぼ返還はありません。これは猫の飼い主が迷子になっても探さない、というよりも自治体に引き取られる猫のほとんどが飼い主のいない野良猫だと考えられます。
今回の結果からの考察
今回発表された数値でわかったことは、返還・譲渡数が頭打ちになったこと。そして殺処分数は減ってはいるものの、減少トレンドは鈍化し始めていることです。
今年の5月に環境省が掲げた「犬猫の殺処分ゼロの定義を明確化し、譲渡が難しいケースを除外する方針」とこの鈍化が全くリンクしないとは言えないでしょう。
殺処分ゼロの定義を変えて「殺処分ゼロ」を達成させるというのは当然本質的な解決にはなりません。また、譲渡数が頭打ちになったということは譲渡先である保護団体も限界いっぱいになりつつあると推測できます。
言い換えるとここから先に進んでいくには、より多くの国民の理解・協力が必要とも言えます。譲渡を増やすための里親という選択肢や、引取り数を減らしていくための地域猫活動、迷子犬とならない管理方法など地道に啓蒙し、より多くの方から理解と協力を得ていくことが本質的な解決に繋がるのではないでしょうか。
参考元:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(平成29年度)を加工して表・グラフを作成
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