「かわいそう」では救えないシリーズの第2回です。前回は殺処分の最初のステップである「引き取り」の実態についてお伝えしました。今回は引き取られ、収容された後どうなるのか(STEP2〜5)についてお調べしました。
STEP2. 一定期間施設に収容
STEP3. 飼い主へ「返還」
STEP4. 新しい飼い主へ「譲渡」
STEP5. 収容期限を過ぎた場合「殺処分」
なお今回は殺処分数についても記載しますが、先に注意事項をお伝えします。自治体に「殺処分をするな」という苦情を申し入れる方がいらっしゃいますが、筋違いな苦情です。自治体の対応もまだまだ完璧ではないかもしれませんが殺処分したくて行っているわけではありません。人手や予算が少ない中、懸命に対応されているのに苦情対応で時間が割かれることは申し入れされる方からしても本末転倒なことですので絶対しないでください。
どれくらいの期間収容されているの?
犬猫は引き取られてからどれくらい収容されているのでしょうか。実は全国的に決まった期間というものは存在しておらず、各自治体が独自に条例として定めています。自治体によって様々ですが1週間程度というところが多いようです。しかし「飼い主から引き取った犬猫の場合は、即日処分が原則」という自治体も多く、1週間必ず収容されているというわけではありません。
現在各自治体は懸命に期間を伸ばす努力を行っています。自治体によっては殺処分ゼロという目標を掲げ収容期間を無期限に設定しているところもありますが、これはこれで別の問題が起きています。
「地元の愛護団体が保健所などから譲渡されにくい犬猫を引き取り、新しい飼い主を募集するという仕組みがあるため、自治体から民間へ動物が移動しているだけという見方もできるのです。動物愛護団体のなかには、限界数まで動物を保護するところも存在し、そこの代表者は『忙しくてコンビニに行くのもやっと』と言っていました」
出典元:日刊SPA! 『「ペット殺処分ゼロ」の名誉の裏で愛護団体が悲鳴を上げる!?』(2016年7月19日)より抜粋
どれくらい殺処分されているの?
収容された犬猫は3つの形式で「処分」されています。
STEP4. 新しい飼い主へ「譲渡」
STEP5. 収容期限を過ぎた場合「殺処分」
それぞれの割合を年間での引き取り数を母数として算出しました。
見ていただいた通り犬と猫では大きく傾向が異なります。
「返還」について
犬の28%は無事飼い主へ返還されています。つまり迷子も多いということがわかります。一方猫については0.4%とほぼゼロに等しい結果でした。猫は室内飼いが多いため迷子は少なく、野良猫が多いということがわかります。
「譲渡」について
「譲渡」には新しい飼い主への譲渡だけではなく、保護団体への譲渡も含みます。犬は35%が譲渡されていますが、猫は子猫が多いので譲渡率が高くなると思われがちですが、実は犬よりもさらに低く25%に留まっています。これは離乳前の子猫が多く、譲渡できる状態ではないことが多いためです。
「殺処分」について
「殺処分」は返還・譲渡されないまま収容期間を過ぎた子や、老齢や病気、人間との生活に向かないなど譲渡の見込みが少ないと判断される子、幼齢すぎて飼育管理が困難な子が対象となります。犬は34%にあたる1.6万頭が殺処分され、猫にいたっては75%にあたる6.7万頭が殺処分されています。猫は引き取り数も多いため、殺処分も必然的に多くなってしまっています。犬猫合計でみると引き取り数13.7万頭に対し、殺処分数は8.3万頭となり約61%が殺処分されていることがわかります。
殺処分の数は減っているの?
下のグラフは2004年から2015年の犬猫別の殺処分数と返還・譲渡数の推移をまとめたものです。
犬猫共に黒い棒グラフで示された殺処分数が減少していることがわかります。少しずつ改善されていますが、特に猫に関してはまだまだ多いという印象です。また、注目すべき点は譲渡の数がそこまで増加していないという点です。引き取り数が減少したことで殺処分数が減っているだけということがわかります。
譲渡の数が多くなったわけではない。
引き取り数の減少=殺処分の減少。
処分に関するまとめ
ポイントを整理すると、
2. 収容期間は約1週間程度の所が多い
3. 犬は飼い主への返還が30%あるが猫は皆無
4. 犬は35%、猫は25%譲渡されている
5. 犬は34%、猫は75%が殺処分されている
6. 引き取り数同様、圧倒的に猫の殺処分数が多い
7. この10年間で殺処分は減少しているが、譲渡はあまり増えていない
8. 殺処分の減少=引き取り数の減少
ということがデータからわかりました。
殺処分数が減少していることは喜ばしいことですが、それでもまだ年間約8.3万頭が殺処分されており、また一時的な避難場所である保護団体も厳しい状況が続いているなど、まだまだ課題は残っています。次回はいよいよどうすれば殺処分を減少させられるのか、私たちにできることは何かについてお伝えでします。
参考元:環境省『動物愛護管理行政事務提要(平成28年度版)』
:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(平成27年度)を加工してグラフ作成